甲府からプース・カフェを飲みに来店!
2012年07月07日


先週の土曜日、朝から生憎の雨だった。
梅雨時は雨が当たり前なのだが、週末の雨はやはり避けたいもの。
出来るものなら、夕刻の開店までに上がって貰いたいと、淡い期待も裏切られた。

すると早い時間に、2人の青年が来店した。
席に着き、モヒートとキューバ・リバーを注文した。
そして飲み終わると、2杯目に1人はゾンビを、相方はプース・カフェを注文。

私は10段重ねのプース・カフェ(pousse-cafe)を作って差し上げた。
出来上がると、10層のお酒の色が見えるように、懐中電灯で照らしてあげた。
するとそれを携帯電話のカメラで写真に収めた。

「実はこのカクテルを飲みに来たのです!」
「どちらからですか?」
「山梨県の甲府からです」
「わざわざありがとうございます」
「甲府のジャズバーで、プース・カフェをお願いしたら、3層までなら作れますと言われました」

それから2人はインターネットで、プース・カフェを調べた。
すると、私のHPに10層のプース・カフェが出て来た。
「これは3層以上だよね、絶対に!」

2人は山梨大学の大学院生だった。
明日の日曜日、大学でお世話になった先生の、結婚式に出席するため、東京へやって来たそうだ。
今日は相方の叔母さんが住む、杉並区阿佐ヶ谷に泊るとのこと。

「強いお酒から飲みたければ、上から順番に飲むとよいですよ。甘いお酒から飲む場合は、ストローで下から飲んでください」

「マスター、ストローをください」
若者たちは楽しそうにプース・カフェを、下層の甘いお酒から愉しむ。


そして仕上げに、ノー・アルコー・カクテルの、プレーリー・オイスター( prairie oyster)を注文。
卵の黄身をオンザロックのグラスへ、ゆっくりと崩れないように入れる。
そして、トマトケチャップ・ウスターソース・ワインビネガー・タバスコを混ぜ、ブラックペッパーを加え、卵黄へかけまわした。

プレーリー・オイスターは、草原の牡蠣の意味を持ち、卵黄の黄色をオイスターに見立てたのである。
そのカクテルはピック・ミー・アップ(pick me up)、つまり「迎え酒」であり、二日酔いからの復活を意味する。

またはコープス・リバイバー(corps reviver)、「死者の蘇り」と恐ろしい呼び名のカクテルの1つでもある。

私は名刺を差し上げ、「今日の来店の記念にどうぞ!」
「ありがとうございます。マスター、また必ず来ます。東京にはちょこちょこと出てきますから」
若者たちは雨の中、店を出て阿佐ヶ谷へ向かった。